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「The combination of stella influences日本語版」あとがき 07“The combination of stella influences Japanese version” Afterword 07

最後に、翻訳作業を通した雑感

 Ebertinは本書導入部の終わりのほうで、もともとは教えを受けていたハンブルグ学派創始者、Alfled Witteの占星術の営み方についてだいぶ厳しく批判、反証しているが、これも今、量子力学と先端宇宙論に置き換えると、非常に面白く感じる。

 物理学の概念に「エントロピー」というものがある。これは物質や状態は、時間が経過するほどに「ごちゃごちゃ度を増していく」というものだ。よく、整頓された部屋が、放っておくと自然にごちゃごちゃになることで例えられている。生命はこの「エントロピー」になぜか逆らって、一定期間形を保つわけであるが、この作用が実に説明がつかない。自然の非生命は、海も山も、確かに時間経過とともに状態が変わっていく。海にはマイクロプラスチックがうじゃうじゃして、魚たちの体にどんどんたまり、飲み水にも空気にも最近マイクロプラスチックが検出されるのは、この「エントロピー」の作用によるものだ。

 わたしは、古典占星術はまさにこの「エントロピー」だと感じている。時間経過とともに、どんどん新しいアイディア、空想、思い付きが投げ込まれて、占星術の「湖」には今やゴミだらけ。その源流ともいえる占星術家がこのAlfled Witte だ。サビアンだの、ヘリオセントリックだの、ドデカテモリ―だの、アラビックパートだ、カジミだ、ボイドだ、小惑星だと、もう「どんどんごちゃごちゃしていく」。本当に、物理学における熱力学第二法則「エントロピー増大則」と、古典占星術のありさまは、そっくりだ。

 ところが「コスモバイオロジー」は反対に、こうした情報を「捨てよう」とする営みなのである。何が使えて、何がダメなのか。統計と実証を土台とし、古典占星術に多くまぶされてしまった「発案者が誰だかもはやわからない技法」を捨て去ろうとする。どんどんそぎ落とす。だからこそ古典占星術信奉者からは、コスモバイオロジーは忌み嫌われるし、Michel Gauquelin が学者たちのみならず、一部の「占星術商売」をやっている人々から攻撃されたのは、そういうことだろう。Ebertinや息子のBaldur博士にしろ、けっこうひどい評価を見かけるのだ。彼らは占星術を科学にしようとしたが、失敗した——。多くはそのような講評である。

 しかし、実は宇宙の本質は「エントロピー増大」ではなく「整理整頓」だというのが、近年の物理学では理解されてきている。これを「エントロピー増大則」を示す「熱力学第二法則」に対して、「情報力学第二法則」と呼ばれ、今、最先端宇宙論で熱心に研究されている。

 宇宙は近年、「これ自体が巨大なコンピューターなのではないか?」と、物理学者の多くに受け入れられはじめているのだ。すると宇宙は、計算負荷を減らすため、あまり使わない情報、必要のない情報を削除してゆく。実際にDNAなどは本当にその通りで、使われない遺伝子は発現をOFFにされ、やがて捨てられるのだ。生物種が淘汰されたり、ウィルスが人間とうまくやれるよう、次第に自らの形質を変化させるのも、情報力学第二法則である。生命は、岩や川などと違い、「情報力学第二法則」によっている。だとするならば、人間生命を扱う占星術は、なおのこと「情報力学第二法則」であろうとしなければいけないのではないだろうか。

 Alfled Witte とEbertinの論争を見ると、まさに占星術の「ごちゃごちゃ」に精神崩壊しそうになったわたしは、もう翻訳しながら手足をバタバタさせずにはいられなかった。まさしくWitteは熱力学第二法則の権化、Ebertinは情報力学第二法則の権化に見えて、こういうとご本人たちには叱られるかも知れないが、非常に「おもしろい」。

 占星術のまさにこれは、情報革命だなと。これからの占星術はどんどんそぎ落とさなければいけないな、と感じている。コスモバイオロジーは「引き算」の占星術であり、古典を中心とした占星術は「どんどんつけたしが増えていく占星術」だと考えると、この学問はだいぶすっきりするのではあるまいか。だからこそ古典占星術や、古典占星術をベースにした個人出生図を読む占星術から入ると、あまりの「ごちゃごちゃ」「複雑性」に、みんなどうしてよいかわからなくなるのだ。だからこそ門馬は晩年、コスモバイオロジーしか教えなくなった。弟子のわたしはそう考えている。

 酒井日香原作「超次元占星術®」も、コスモバイオロジーの土台に立つ占星術であるから、見てください。めちゃくちゃシンプルで簡素です。 でも生命の本質が近年解明されてきたように「情報力学第二法則」であるならば、占星術はシンプル化に向かうことが自然の道理である。もうあんなぐっちゃぐちゃのチャートとにらめっこする必要はない。(とはいえわたしは古典占星術もお教えしているし、古典占星術研究家の名誉のために言っておくと、古典には古典で、きちんと勉強すれば情報の交通整理は見えて来るし、なるほど! と、論理的に納得させる部分はたくさんある。どちらもやってみることが、占星術世界の全体像を把握するために大切なことだと思う)

 ということで、「超次元占星術®」を教えるための絶対根本経典、唯一無二の超次元占星術の教科書は、なによりこの本書「 The combination of stella influence 」でなくてはならない。それはわたしの死後も、わたしが教えた生徒たちにおいても、ずっとそうだ。量子力学、超弦理論、宇宙の究極のひみつにさえ迫るコスモバイオロジー。広く心ある占星術家にひろまり、科学的な占星術研究が世界に広まってゆくことを、切に祈ってこの本の監訳者あとがきとする。

2024年9月 超次元占星術R 原作者 酒井日香

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